犯罪心理学研究
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原著
多数の同胞に非行の生じた家族の研究
石原 務池川 三郎
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1974 年 10 巻 2 号 p. 41-52

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抄録

同一家族の同胞の半数以上が犯罪者になっている家族(非行同胞群)83と極貧状態と片親又は両親に酒乱,出奔などの問題行動があって犯罪者の生じていない家族(対照群)20を調査し,家族における犯罪促進と抑止の病理を検討しようとした。

1. 非行同胞群では父親の酒乱,病弱,横暴,女性関係,やくざ,犯罪,母親の家出などが多かった。

2. 父親の問題行動の多くは,結婚前から持続していたが,母親のばあいは,父親の巻添えとして派生したものが多かった。

3. 母親の家出は,父親の問題行動に随伴して経済機能が崩壊したばあしへに多発する傾向がみられる。

4. 非行同胞群の家計は,極貧と下位が過半数を占め,地域環境も貧民街が圧倒的に多かった。

5. 同胞の男女比では,非行同胞群は,兄弟が姉妹の3倍をこえ,姉妹欠損家族が35%にたっし,非行発生率は兄弟が87%,姉妹は29%であった。対照詳では男女の間にこのような差がなかった。

6. 父子家庭よりも母子家庭の方に肉親間の共犯関係が生じやすい傾向があった。

7. 父親や先祖が偶像化され,同一視が生じて非行が抑止されていると考えられる例があった。

8. 対照群では非行同胞群にくらべて同一事象の価値判断が向上的な意欲と結びついているのに対して,非行同胞群では逆恨みや怠惰に結びついていることが多かった。そして,それらは肉親や近隣による方向づけが影響していると考えられた。

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© 1974 日本犯罪心理学会
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