Pd得点の高い非行少年は,低い非行少年よりも学習の程度が低いという仮定を検証するため,言語条件づけを用いた2つの実験がおこなわれた。実験Iでは,言語条件づけで典型的に用いられる報酬的強化因のみならず,罰をも強化因として用いた。その結果,Pd得点から非行少年を3段階にわけてみると,報酬条件においてはPd得点が高くなるほど学習の程度は低くなった。一方,罰条件においてはPd得点が高い非行少年ほど反応の増加は大であった。
実験Ⅱでは,Pulsemeterを用いて自律性興奮の程度を測定し,Pd得点と自律性興奮の高低から4つの組合せが設定された。その結果,Pd得点は高いが自律性興奮の程度は低い型に属する非行少年にのみ有意な反応の増加がみられ,他の3つの型に属する者は学習が成立していなかった。
これら実験I,Ⅱの結果から,Pd得点の高い非行少年は自律性興奮が低いために学習が成立しないという従来の見解が支持されないことがわかった。さらにこれらの非行少年において学習が成立するかどうかは,剌激場面によって大きく変化するということが示唆された。