1976 年 11 巻 2 号 p. 21-28
1.個別処遇の理念にもとづくDifferential Treatmentを我が国で実施するために,その前提として我が国独自の処遇類型をうちたてる必要があるが,そのために, H・Quayの類型の意義と,我が国での追試にはじまるcross-cultural comparative studyが重要であることが述べられた。
2.その第1段階として,測度の1つであるBehavior Checklistの研究を行うため,原法が邦訳され,訓練をうけた職員が行動観察の結果,行動をチェックした。対象は播磨少年院在院生50名,神戸少年鑑別所入所少年100名である。
3.Checklistの各項目について項目間因子分析が行われ,バリマックス法により回転した回転行列が作成された。その結果6つの因子が抽出され,第1因子は原法のCP,第2因子はほぼPP,第3因子はほばSDにあたることが見出され,文化交差的に,非行少年の行動特性には,ほば共通した位層の存在することが明らかにされた。ただ,第4因子は,自我の弱い情緒不安定なヒステリ-性格という意味づけをもち,原法II因子と似てはいるが,日本的な側面をもつことが示唆された。また,第5因子は学校恐怖症的な因子,第6因子はスピーチに関する因子と考えられた。
4.知能及び年令と,因子得点の相関が計算され,年令と第1,第2,第3因子とに有意の相関が見出された。
5.今後の問題として,各因子に相当するケースについて実際的妥当性をみることや,他の測度についてcross-culturalな研究を行う必要性が述べられた。