犯罪心理学研究
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原著
非行少年の負の情緒Ⅱ―腹立たしさの構造―
青木 邦子
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1977 年 12 巻 2 号 p. 9-20

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抄録

前回の研究ではいわゆる“腹立たしさ”とか“怒り”がどのような領域に分かれているかが検討されたが,今回はそれらの領域が実際にはどのような構造をもっているかが検討された。前回の研究での質問項目からdel項目,N項目,A項目が選び出され,154項目について前回と同様に腹が立つか立たないかを〇,Xで回答させた。その結果が因子分析され,7因子といずれにも含まれない残りの30項目とが得られた。

得られた因子は次のように解釈された。

第一因子:単純な怒り……主に他者との関係のあり方に焦点があわされている。

第二因子:不平不満が多く何となく面白くない………delに特徴的な因子

第三因子:幼雅な倫理観にもとずく末熟な判断………delに特徴的な因子

第四因子:無力感,疎外感,と他者への羨望………delに特徴的な因子

第五因子:境遇への不満と世の中の矛盾への絶望感…delに特徴的

第六因子:普通は腹立たしさを感じないが,まれには感じることもあり,それは非行群に多い,

第七因子:他人には理解できない被害感……delに特徴的,

今後の研究の方向としては次のようなことが考えられた。非行群では情緒の強さに幅がないこと,どちらかというとカッとするかしないかの二通りでしかもカッとすることが多い面がある。そこで彼らのおこす怒りの強さを五段階評定で測定し同一事態への評点をdelとcontの間で比較すること,またひきおこす情緒の質に分化度の少ないことも予想されるので特にN項目やdel項目のX印回答の情緒の質を形容句の選択によって検討してみたい。

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© 1977 日本犯罪心理学会
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