犯罪心理学研究
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原著
犯罪抑止力から見た社会的制裁の尺度化
高橋 良彰
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1977 年 12 巻 2 号 p. 1-8

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抄録

犯・非行の事前抑止という見地から,各種社会的制裁の抑止カについて,一般青少年を対象として分析した。取り上げた社会的制裁は,法執行機関による公的な制裁と法執行機関によらない非公的な制裁である。具体的には次のとおりである。1)家の人との関係が非常にまずくなる。2)クラスの友達との関係が非常にまずくなる。3)先生との関係が非常にまずくなる。4)今いる学校をやめなければならなくなる。5)将来の進学や就職が難しくなる。6)警察で取り調べられたり注意されたりする。7)裁判にかけられる。8)少年院や刑務所に入れられる。これらの制裁を,つらさという軸で一対比較させた。尺度化は合成標準法によった。対象者は,中学2年生の男女,高校2年生の男女,大学生の男女。

主な結果:男子について――各学年とも,公的制裁としての「少年院や刑務所に入れられる」が最もつらいとされており,これが中・高・大生にとって大きな犯・非行抑止要因となりうるが,家族との関係とか将来の進学や就職が難しくなるといった非公的制裁も十分大きな影響を持つ。特に中学生のような年少者では,家族関係による制裁が重要な犯罪抑止要因であり,高校生・大学生と年長になるにつれて,将来の進学や就職が困難になるということが重要な抑止要因となってくる。

女子について――大わくとしては,男子とよく以ており,「少年院や刑務所に入れられる」が各学年とも最もつらいとされている。次に家族との関係が各学年共通してあげられている。男子と比べて異なる点は,クラスの友達との関係が各学年とも男子に比べてつらいほうに位置していることである。逆に,将来の進学や就職が男子に比べて重みが軽くなっている。発達的傾向は男子と同じであり,年長群ほどその重みは増してくる。

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© 1977 日本犯罪心理学会
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