犯罪心理学研究
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原著
問題行動の研究―習慣的非行少年の初発問題行動―
砂山 延雄
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1981 年 18 巻 1.2 号 p. 12-18

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抄録

1. 継続的に非行を繰返えす少年の最初の問題行動は,① .怠学(29.2%)②.窃盗(16.5%)③.けんか・暴行(7.8%)④.喫煙(7.5%)⑤.性交(6.5%)の順であった。

初発問題行動として怠学は全体の約30%と多い。一般に怠学位いと甘く考えることは非常に危険である。またその他の前述の問題行動も習慣性非行少年になりやすい行動なので,その行動を発見した時は真剣に取組むことが大切である。特に義務教育中は家庭と学校の緊密な連絡によって,その発見も早くなり,両者の協力で効果のあがる少年が多いように思われた。

2. 初発問題行動の年代別発生率を多い順からみると,①.中学生(40.4%)②.小学校高学年(20%)③.小学校低学年(19.7%)④.中学卒業後(12.9%)⑤.就学前(7%)であった。

中学生は約40%と小学生の二倍であり,青年前期の指導が難かしく,失敗しやすいことをしめしている。中学生になって問題行動が発生した時は,青年前期であることを考えると,少年非行の専門家に相談することが効果的であろう。

3. 初発問題行動としての怠学について,年代別に発生率の多い順にあげると,①.中学生(44.8%)②.小学校低学年(25.8%)③.小学校高学年(14.7%)③.中学卒業後(14.7%)であった。

怠学の約70%は中学生と小学校低学年に発生している。このことはこの年代が学校生活への適応の大切な時期であるので,特段に家庭と学校の緊密な連絡の必要なことをしめしている。

4. 怠学した少年について,中学になって発生した少年よりも,小学校低学年頃から発生している少年は,問題のある親に育てられ,怠学すると家でぶらぶらしており,能力的には普通以上の者が多く,その後になって施設へ収容される少年が多い。なお,その後の窃盗発生率は80%と多かった。

5. 初発問題行動としての窃盗について,年代別に発生率の多い順にあげると,①.中学生(40.6%)②.小学校高学年(21.9%)③.小学校低学年(20.3%)④.就学前(10.7%)⑤.中学卒業後(6.3%)であった。

中学生の窃盗の大部分は遊び型非行といわれているものであるが,非行少年になる率が高いことをしめしているものであり,注意すべきであろう。

6. 窃盗した少年について,中学生になって発生させた少年よりも,幼少期に発生した少年は,親のしつけが不適切で,小学校の学業成績の悪い少年が多かった。なお,窃盗の再犯率は100%である。

7. 怠学と窃盗の背景としては,幼少期窃盗した少年は,怠学少年より欠損家庭に育っている少年が多く,中学生になって窃盗した少年は,怠学少年より問題のある親に育てられた少年が多かった。即ち,怠学した少年よりも,窃盗した少年は幼少期においても,中学生においても親の影響が大きいといえる。

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© 1981 日本犯罪心理学会
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