2010 年 47 巻 2 号 p. 1-14
本研究では,連続放火事件のベイジアンネットワーク(BN)モデルを構築し,犯罪者フロファイリングを想定したモデルの精度を検討した。モデル精度の検証は,窃盗歴と就業状態の推定を通じて行った。BNは,現象の因果関係を条件付き確率の連鎖ネットワークによって表し,未知の現象に関する可能性を確率で算出することができる。詳細な手続きや結果は次のとおりである。まず,探索アルゴリズムの一つであるK2アルゴリズムおよび情報量基準の一種であるMDL (minimum description length) を用いて,学習用データ(518名)を基にBNモデルを構築した。その結果,放火犯の窃盗歴は放火後の通報という行動や駐車場などの放火現場といった変数と関連性がみられた。さらに,就業状態は車両の使用と関連性がみられた。第2に,検証用データ(未解決事件と想定した30名のデータ)を用いてモデルの精度を検証した。その結果,窃盗歴に関する精度は80%と高かった。しかし,就業状態に関する推定精度は50%であった。より精度を高めるためには,より正確な情報のデータペースを使用し,さまざまな探索アルゴリズムや情報量基準を用いることで,モデルを試行錯誤して構築していく必要がある。