2013 年 50 巻 1 号 p. 15-25
本研究では,犯罪に対する反応と一般的信頼,犯罪被害に対する楽観視との関連を検討することを目的に二つの調査を実施した。研究1では,3歳から12歳までの子どもを持つ母親 (N=1040)を対象にインターネット調査を実施し,研究2では,女子大学生 (N=216名) を対象に質問紙調査を実施して,それぞれ犯罪に対する認知反応(治安悪化認知,被害リスク認知),犯罪に対する感情反応(社会的不安,個人的不安),防犯行動,一般的信頼,そして犯罪被害を楽観視する傾向に回答を求めた。その結果,幼児を持つ母親においても,女子大学生においても,(a)犯罪被害楽観視と,犯罪に対する認知反応や感情反応,そして行動反応との間には負の関連が見られた。それに対して,(b)一般的信頼と犯罪に対する認知・感情反応との間には関連が見られず,むしろ一般的信頼が高いほど,防犯行動を多く実施していることが明らかとなった。