矯正は,司法および行政という国の機能と密接に結びついて多面的な役割を果たすことが期待されている領域であり,したがって矯正領域における犯罪心理学研究も,目的,対象,方法,視点等の点において極めて幅広くかっ多様性に富むという特徴を有している.
研究課題としては,犯罪者・非行少年と認定され,施設に強制収容された対象者にかかわるアセスメントと処遇が中核をなしているが,矯正に固有の機能や条件に関連する実務的・現実的な課題,例えば施設適応,収容環境から生じる資料の歪曲,他機関に送付する公式文書の内容や表現等の問題も数多く存在しており,理論および実践の両面からの研究が積み重ねられてきている.こうした視点から矯正領域におけるこれまでの犯罪心理学研究の動向を広く概観するとともに,従来の研究成果や動向を踏まえつつ,矯正領域において今後の犯罪心理学研究に期待されるいくつかの課題について述べる.