犯罪心理学研究
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原著
虐待の被害児に対する加害親の過剰期待―保護者による社会生活能力の評定と子どもの知能検査結果との乖離―
緒方 康介
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2016 年 53 巻 2 号 p. 17-27

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抄録

被害児に対する加害親の過剰期待が虐待の発生に関連するとの知見が報告されている。児童相談所で新版S-M社会生活能力検査(S-M)とWechsler Intelligence Scale for Children-fourth edition (WISC-IV)が実施されたケースから,①虐待被害児のS-Mを加害親が評定(n=35),②虐待被害児のS-Mを施設保育士が評定(n=20),③虐待されていない子どものS-Mを保護者が評定(n=59),④虐待されていない子どものS-Mを施設保育士が評定(n=18)しているデータを収集した。社会生活指数(SQ)からIntelligence Quotient (IQ)を減算した差分Δに評定者の過剰期待が反映されていると操作的に定義した。年齢と群の要因が交絡していたため,年齢要因をランダム効果に設定した線形混合モデルにより分析したところ,Δ(SQ-IQ)には群間差が認められ(F[3, 126.3]=4.54, p=0.005),③虐待されていない子どもの保護者評定より,①虐待被害児を加害親が評定した場合にΔ(SQ-IQ)は大きかった。過剰期待が生じる背景に認知バイアスが潜在している可能性を考察した。加害親の過剰期待に関する知見が得られたことから,児童相談所における保護者支援の手掛かりが示されたものと結論した。

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© 2016 日本犯罪心理学会
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