犯罪心理学研究
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原著
児童自立支援施設退所者の高校進学後の社会適応過程—複線径路・等至性モデル(TEM)による分析—
河合 直樹窪田 由紀河野 荘子
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2016 年 54 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

社会的養護にある児童の高校進学率が年々高まっているなか,高校中退率を見てみると,一般家庭よりも社会的養護出身者のほうが高く,とりわけ,児童自立支援施設退所者に至っては,全国的に調査されたデータはなく,その要因についてほとんど研究がなされていない。そこで本研究では,児童自立支援施設退所後,高校進学した者の社会適応過程について,複線径路・等至性モデルを用いて質的に分析した。調査協力者4名へのインタビューから作成したTEM図をもとに分析を行った結果,高校を卒業した者と中退した者とでは,(1)高校へ入学した初期の段階で,部活へ入るなどの新しい活動の場=自分の居場所を見いだせること,(2)授業でわからないことがあったときに友人や教師に助けを求められること,(3)担任教師に対する信頼感があることが,高校を継続していくために重要な要因であることがわかった。

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© 2016 日本犯罪心理学会
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