犯罪心理学研究
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有機溶剤乱用少年についての臨床心理学的観察
西村 駒次郎
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1971 年 8 巻 1.2 号 p. 20-29

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抄録

1,前橋少鑑で扱った収容少年の16%は,有機溶剤乱用経験がある.

2,乱用経験者のうち44%が常習者である.

3,適応機制負因型の社会的不適応者は,感応機制負因型の者よりも,有機溶剤への精神的依存が進んでいる.

4,単独吸引型は「酪酊感」および「Reaction」にはしり,集団吸引型は「社交手段」ないし,「酪酊感」にとどまる者が多い.

5,「Reaction」型はもっとも精神的依存の強いケースであり,性格的に神経症的である.対人関係も稀薄化している点が共通にみられる.

6,「酪酊感」型は依存の初期である.大部分の常習者はこの段階までしか進まないと思われる.

7,単独吸引を常習とする「酪酊感」型は,無気力で孤独な落伍者タイプと,集団に依存し,埋没せずには心的均衡の保てないタイプとに分けられる.

8,集団吸引を常習とする「酪酊感」型はいわゆる,シンナー・ボンド遊びグループか,反社会的グループの一員である.反社会的グループヘの参加が積極化すると,有機溶剤から遠のいていく.

9,依存中期段階に達する者は,固有な神経症的特徴を持っている.基底性格として意志薄弱性が顕著で,弱い情緒性を特徴とする者は非攻撃的傾向を示すが,強い情緒性と偏執性,顕示性,気分易変性,爆発性などの特徴を持つ者は,攻撃的である.後者の中で,攻撃が内に向けられる者の中から自殺事例が発生する.

10,精神的依存を臨床心理的立場から「前期」「初期」「中期+後期」に分けると,常習者はそれぞれ,40%,40%,20%である.

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© 1971 日本犯罪心理学会
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