抄録
今回, われわれは肛門温存術式の際に必要な肛門側切除距離を明らかにするために, 腹会陰式直腸切断術 (以下APR) を施行した直腸癌症例の腫瘍肛門側進展距離を検討した。方法 : 1994年1月から2004年12月までにAPRを施行した原発性直腸癌35例の病理標本を検討し, 標本中での腫瘍肛門側進展距離を測定した。結果 : 肛門側進展は12例 (34%) あり, このうち5例 (14%) は1.1cm以上進展していた。1型, 1/2周以下, mp以浅では肛門側進展を認めなかった。1.1cm以上進展していた5症例は術前, 術中に3群以上のリンパ節転移が認められていた。結論 : 1型, 1/2周以下, mp以浅は肛門側切除距離を1.0cm確保すればよい。3群以上のリンパ節転移がある場合は個々の症例に応じた術式を選択すべきである。これらの症例以外では肛門側切除距離2.0cm確保できれば肛門温存手術を選択できると考える。