抄録
症例は54歳, 男性。既往歴として慢性膵炎がある。2004年5月人間ドックで膵尾部の腫瘤を指摘され当院を受診, 精査で膵尾部後面の仮性嚢胞が疑われた。2カ月後の腹部CT検査で嚢胞は増大し, 確定診断のためCTガイド下嚢胞穿刺術を施行した。穿刺液の膵型アミラーゼ, リパーゼの異常高値, 蛋白高値にて膵仮性嚢胞と診断した。穿刺1カ月後に咳と呼吸苦を自覚し, CTおよび胸部X線検査で左胸水貯留が確認された。胸水は穿刺にて膵型アミラーゼ, リパーゼ, 蛋白が高値で膵性胸水と診断した。胸水は保存的治療に抵抗性で, 膵体尾部切除術, 摘脾術を施行した。術後経過は良好で現在無症状, 無再発である。CTガイド下穿刺ドレナージは低侵襲で正確な処置が可能とされるが, 本症例のように医原性と考えられる合併症もあり, 穿刺には十分な注意が必要である。