2007 年 32 巻 6 号 p. 842-846
2000年から2005年までに経験した腹部刺創症例16例について検討した。男性12例, 女性4例であり, 年齢は24歳から90歳にわたり, 平均年齢は57.5歳であった。損傷形態では, 腹膜非穿通4例, 腹膜穿通12例であった。刺創部位は, 左上腹部に多かった。自傷が13例, 他傷が3例で, 自傷例のうち6例がうつ病であった。凶器は果物ナイフによるものが13例と多く, 凶器が残存していたのは3例であった。腹部刺創は日常的に遭遇する疾患ではなく, 診断治療の判断に迷うことがある。精神疾患を有する患者が増加している現在, 腹部刺創患者も増加すると考えられる。適切な治療で良好な予後を期待できるため, 全身状態と補助的診断法をあわせて適切な治療を進めていくことが重要である。