日本外科系連合学会誌
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症例報告
肝細胞癌と術前鑑別困難であったアルコール多飲者に発生した径4cmの過形成結節の1例
加藤 孝章片桐 聡吉利 賢治有泉 俊一小寺 由人高橋 豊山本 雅一
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2009 年 34 巻 1 号 p. 100-104

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抄録

 症例は43歳,男性.C型慢性肝炎,アルコール性肝障害で近医にて経過観察中,腹部超音波検査でS2/3に46mmの低エコー結節を認めた.腹部CTは単純相で低吸収域,動脈相で強く濃染され,平衡相で低吸収域となる境界明瞭な4cmの腫瘍であった.HCV抗体陽性で,腫瘍マーカーは正常であった.2005年12月,肝細胞癌の診断にて外側区域部分切除術を施行した.肉眼所見では被膜を伴い,境界明瞭で膨張性に発育する軟らかい4.2×3.0cmの黄褐色調の腫瘍であった.病理組織学的所見では非結節部は肝硬変で,結節部に肝細胞の異型はみられず,動脈系の血管を認めた.正常の索構造,類洞の拡張を呈し,多核好中球が浸潤していた.以上よりアルコール性肝硬変に発生した過形成結節と診断した.アルコール多飲者の径4cmの過形成結節は稀であり,肝細胞癌と術前鑑別困難であった1例を経験したので報告する.

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© 2009 日本外科系連合学会
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