2009 年 34 巻 1 号 p. 112-116
門脈大循環短絡による肝性脳症は猪瀬型肝性脳症と呼ばれている.症例は73歳,女性.記銘力低下および手指振戦が出現し,脳血管性痴呆および症候性てんかんと診断され経過観察されていたが,意識消失にて当院に救急搬送された.血性アンモニア値が472μg/dlと高値を示し,CTにて下腸間膜静脈―左卵巣静脈短絡路が認められたため,猪瀬型肝性脳症と診断した.内科的治療により脳症は改善したものの,アンモニア値は正常化しなかったため短絡路閉鎖術の適応と判断した.当初IVRによる短絡路閉塞術を試みたが,短絡路の完全閉塞に至らず,外科的に短絡路閉鎖術および静脈瘤切除術を施行した.術後アンモニア値は正常化し,経過良好であった.門脈大循環短絡路の閉塞術において現時点ではIVRが第一選択となりうるが,IVRで閉塞に至らない例に対しては現在もなお外科手術が有用であると考えられた.