日本外科系連合学会誌
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症例報告
鼠径ヘルニア偽還納によるイレウスを腹腔鏡下に診断しえた1例
冨田 眞人亀山 哲章三橋 宏章松本 伸明長谷川 康関本 康人
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2010 年 35 巻 1 号 p. 51-55

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抄録

 症例は57歳,男性.十数年来,右鼠径部膨隆を時折自覚していたが自然に改善,消失していた.1日前に鼠径部膨隆を認めたが自然に改善,消失した.その後も心窩部痛,腹満,嘔吐が続き,夜間救急外来受診となる.腹部全体が膨満していたが鼠径部にヘルニアは認めなかった.腹部CTで鼠径ヘルニアを疑ったがイレウスの原因と断定するには乏しい所見であった.保存的治療にて改善がないため,緊急手術を施行した.鼠径ヘルニアがイレウスの原因に関与していることを疑い,手術は鼠径部からアプローチした.同アプローチにてヘルニア門より腹腔内で小腸が嵌頓していることが疑われた.他の原因検索もかね腹腔鏡を用いて検索したところ,腹膜前腔に落ち込んだヘルニア嚢に小腸が嵌頓し偽還納の病態であることを診断した.低侵襲で詳細な検索が可能な腹腔鏡併用手術は本症例のような稀な病態には有用であると考えられた.

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© 2010 日本外科系連合学会
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