2013 年 38 巻 5 号 p. 1005-1010
胃・直腸またはS状結腸重複癌に対する一期的完全腹腔鏡下手術の報告は少ない.また,本術式の術後短期quality of life(以下,QOL)に関して一期的開腹手術との比較は十分にされていない.症例は61歳,男性.胃・直腸重複癌に対し,一期的完全腹腔鏡下幽門側胃切除術および低位前方切除術を施行した.本術式の術後短期QOLが一期的開腹手術よりも優れているかどうかを検討するために,自験例と当科で施行された胃・直腸またはS状結腸重複癌に対する一期的開腹手術症例(14例)の手術時間,出血量,術後経過を比較した.その結果,自験例は開腹手術症例の中央値よりも出血量が少なく,排ガス確認日や経口摂取開始が早く,術後入院期間は短縮した.本術式は,時間短縮の点で改善の余地はあるが,開腹手術に比べ整容性に優れ,低侵襲であるため,術後短期QOLは大幅に改善すると考える.