抄録
症例は58歳,男性.上腹部痛と微熱で前医を受診した.血液検査で白血球数とCRP値の上昇,貧血を認め,精査にて壊死・感染を伴う進行胃癌が疑われた.緊急入院となり,待機手術の予定で抗生剤投与が行われるも全身状態が悪化し,精査加療目的に当院紹介受診となった.受診時の腹部CT検査で,肝外側区域に胃病変と連続した低濃度腫瘤陰影を認めた.同病変を胃癌肝浸潤に伴う肝膿瘍と考え,同日緊急手術を施行した.術中所見では胃と肝外側との強固な癒着を認め,一塊として胃全摘,肝外側区域切除術を施行した.切除標本では胃漿膜と肝被膜との癒着の一部が断裂し,胃癌壊死部と肝組織壊死部との交通を認めた.病理組織学的には肝被膜への直接浸潤を認めたが,肝実質への浸潤はなかった.進行胃癌の肝被膜直接浸潤に起因する肝膿瘍は稀である.本症例のように一塊として切除を行うことが重要と考え,若干の文献的考察を加えて報告する.