抄録
症例は65歳,男性.1995年より腎囊胞による腎不全に対して血液透析を導入していた.2006年より膵鉤部に単発の囊胞性病変を指摘され,2010年には30mm大と膵囊胞の増大および囊胞内部に充実性成分を認めた.膵液細胞診はClass 3で膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断し,切除を予定したが術前評価にて大動脈弁最大圧較差63mmHgの大動脈弁狭窄症を認めたため,大動脈弁置換術を先行させた.開心術後75日目に,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査所見は,分枝型膵管内乳頭粘液性腺癌(非浸潤癌)であった.術後2日目より血液透析を再開し,術後合併症を認めず,術後37日目に軽快退院した.現在,術後約2年2カ月が経過し再発なく日常生活に復している.長期血液透析患者に対して,十分な術前評価,厳重な周術期管理を行うことで,膵頭十二指腸切除術においても安全に施行できると考える.