抄録
膵頭十二指腸切除術中に腹腔動脈起始部圧迫症候群と診断し,術後多発肝膿瘍が出現したが,術後肝血流維持の工夫とドレナージで改善した1例を経験したので報告する.症例は40歳代男性.腹部膨満感と嘔吐を主訴に受診,画像診断で十二指腸下行脚の閉塞と膵・十二指腸周囲を囲む陰影を認めた.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し,再建中にCACSと診断.腹腔動脈根部を囲む線維性組織を開放したが拍動の回復はなく,血圧上昇により拍動再開したため術後動脈血圧を高めに維持することとした.また肝血流増加目的でプロスタグランジンE1製剤,ドパミン投与を行った.術後肝血流低下によると考えられる多発肝膿瘍が出現したがドレナージにより経時的に改善し,術後2カ月のCTでは側副血行路により肝血流は回復を認めた.病理検査結果では十二指腸漿膜下と膵臓の間に硝子化を伴う線維性の結合織が増生しており,血流障害の影響が考えられた.