抄録
症例は60歳代,男性.発熱と腹痛を主訴に前医を受診し,CT検査で腹腔内腫瘍が疑われたため当科に紹介となった.当科受診時,発熱や腹部異常所見は認められなかったが,CT検査において小腸腸間膜内にairを含む腫瘤像を認めたため,自覚症状はなかったものの精査加療目的に入院とした.入院翌日に突然39.5℃の発熱と筋性防御を伴う腹痛が出現し,汎発性腹膜炎の所見を呈したため緊急手術を施行した.開腹所見では,小腸腸間膜内に周囲小腸を巻き込んだ腫瘤を認め,その一部が自壊して腹腔内に腸液が流出していた.手術は小腸腸間膜内の腫瘤および小腸部分切除を施行した.術後経過は良好であり第14病日に軽快退院した.手術検体の病理診断は,腹腔内デスモイドであった.入院時の時点では,小腸腸間膜に発生したデスモイドは隣接する小腸に穿通していたものの,腸液の漏出が腸間膜内に限局していたため一過性の症状改善を認めたが,デスモイドの自壊により腸液が腹腔内に流出し,汎発性腹膜炎を呈したものと考えられた.