抄録
症例は63歳の女性で8年前に子宮癌の手術既往があり,腹満と腹痛,便秘を繰り返していた.次第に増悪し,閉塞部位不明の腸閉塞の診断で消化器内科より紹介された.腹腔鏡下観察で癒着なく,小腸大腸に蠕動を認めた.観察後も腸閉塞は改善せず,蠕動低下が疑われたS状結腸直腸部で腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.しかし症状は増悪,直腸ステント留置が追加施行され,さらに増悪した.慢性偽性腸閉塞症(CIIP)類似病態の診断のもと,ステント除去と排便簡便化目的でHartmann手術を施行,メトクロプラミドなどの薬物併用で腸閉塞は軽快した.腹部手術既往のあるCIIP類似病態報告例は稀である.本邦の診断基準案で腹部術後症例はCIIPから除外されているが,腹部手術既往報告例は全例CIIPに準じた治療が行われていた.精査の結果が病態と合致すれば,CIIPに準じた治療を早急に行うことは患者の病悩期間を短くすると考えられた.