抄録
症例は65歳,男性.便潜血陽性の精査のため当院紹介となった.大腸内視鏡検査で下行結腸に4型腫瘍を認め,同部の生検で低分化型腺癌が判明した.初診から6週間の時点で突発する左側腹部の鈍痛を自覚,翌日になり高熱を伴ったため緊急入院となった.入院時の腹部CTにて,左水腎症,腎・尿管周囲に液体貯留を認め腎盂外尿溢流が疑われた.逆行性腎盂尿管造影を行ったところ,結腸癌の後腹膜浸潤が原因と考えられる中部尿管の閉塞を認めた.尿管ステントを留置し中枢側の造影を行ったところ腎盂周囲への造影剤の漏出を認めた.その後に速やかに腹痛の消失,解熱を認めた.多発肝転移を伴う症例であるためmFOLFOX6+ベバシツマブによる化学療法を施行したが,肝転移の進行を認め初診より11カ月で癌死した.
進行大腸癌ではしばしば尿管閉塞による水腎症を経験するが,腎盂尿溢流をきたすことは稀である.腎盂内圧の急激な上昇が自然腎盂尿溢流の要因の一つとして挙げられるが,低分化型腺癌による急速な腫瘍進行がその発生に関与したと考えられた.