抄録
胃空腸横行結腸瘻は,胃切除後の吻合部潰瘍によって引き起こされる比較的稀な合併症である.症例は74歳男性.昭和42年,十二指腸潰瘍に対し幽門側胃切除・BillrothⅡ法再建術(結腸後)を施行された.平成25年1月よりタール便を自覚し,上部消化管内視鏡で残胃空腸吻合部の潰瘍からの出血を認め,PPIを内服し経過観察されていた.同年6月より未消化の食物残渣を含む頻回の下痢,体重減少を自覚した.上部および下部消化管内視鏡検査が施行され,残胃空腸吻合部と横行結腸を交通する瘻孔を認めた.上部消化管造影でも交通が確認され胃空腸横行結腸瘻と診断し,手術目的に当科紹介となった.開腹下に瘻孔を含めた残胃幽門側胃切除,空腸部分切除,横行結腸部分切除,Roux-en Y再建を実施した.術後は下痢症状が消失し,栄養改善を認めた.下痢や体重減少で発症し,手術で根治した胃空腸横行結腸瘻の1例を経験したので報告する.