抄録
症例は49歳の女性で,近医での上部消化管内視鏡検査にて十二指腸の多発潰瘍瘢痕を指摘され,また血清ガストリン値の上昇も認められたため,精査加療目的に当院紹介入院となった.当院で施行した上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に粘膜下腫瘍を認め,造影CTおよび選択的動脈内カルシウム注入試験にて十二指腸下行脚にガストリノーマが局在すると判断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後は問題なく経過し,第34病日に退院.血清ガストリン値も正常範囲となった.術後約3年の現在,無再発生存中である.術前に十二指腸ガストリノーマと局在診断し,手術治療を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.