2015 年 40 巻 2 号 p. 238-243
症例は68歳,男性.便秘,腹痛,食欲低下,左肩の痛みを主訴に近医を受診した.胸部X線検査で左肺の腫瘤陰影を指摘され,当院に入院となった.CT検査では左肺上葉に胸壁浸潤を伴った原発性肺癌を疑う径4.8cmの腫瘤と小腸腫瘤を先進部とする腸重積によるイレウス所見を認めた.イレウス管からの造影検査で回腸末端付近に小腸腫瘤を確認した.イレウス解除目的で開腹術を行った.回腸末端から約40cm口側の小腸腫瘍が先進部となり重積を惹起していたため,回腸部分切除を施行した.小腸腫瘍は病理組織学的に肺腺癌の転移病変と診断された.術後27日目に退院となったが,PSが低下したため左肺腫瘍への放射線治療のみを行った.術後98日目に癌死するまで自宅で経口摂取が可能であった.腸重積をきたす肺癌の小腸転移例の予後は不良であるが,手術適応を十分見極めた上での外科治療は,限定的ながらも生活の質を改善させる可能性がある.