2015 年 40 巻 2 号 p. 244-250
症例は84歳女性.入院2日前より続く左下腹部痛が増強し,近医を受診した.腹膜刺激症状を認めたため,精査加療目的に当院紹介となった.CTで左下腹部の小腸の壁肥厚,腸管外ガス,周囲脂肪織の濃度上昇を認め,小腸腸間膜膿瘍が疑われた.原因は不明であるが,小腸穿通による腸間膜膿瘍の診断で,入院同日緊急手術を施行した.開腹所見として,トライツ靭帯から約100cmの部位に小腸腸間膜膿瘍を認め,小腸部分切除を施行した.切除標本を開くと,腸間膜付着側に複数の憩室が散在し,その一つが腸間膜内に穿通していた.病理組織学的所見では,憩室は筋層を欠く仮性憩室の穿通および,腸間膜膿瘍と診断された.小腸憩室の多くは仮性憩室であり,腸間膜付着側に発生することが多く,穿孔した場合は腸間膜内に穿通し,腸間膜膿瘍を形成することが多い.原因不明の小腸腸間膜膿瘍を認めた場合,鑑別疾患として小腸憩室よる腸間膜穿通を念頭に置く必要がある.