抄録
症例は60歳男性.スクリーニングの腹部CTにて膵体尾部の囊胞性腫瘍を指摘され,1年後のフォローアップでわずかながら増大傾向が認められた.血清CEA,CA19-9値は著明な上昇を認めた.ERCPでは膵管と囊胞との間に交通は認めなかった.腫瘍マーカー高値を伴った増大傾向のため,悪性膵囊胞性疾患が否定できないことから手術の方針とし,悪性腫瘍の可能性を考慮して脾摘を伴う膵体尾部切除,D2リンパ節郭清を施行した.病理学的には囊胞は重層扁平上皮で裏打ちされ,上皮直下はリンパ濾胞の散在する豊富なリンパ性組織からなり,膵リンパ上皮囊胞と診断した.免疫染色では扁平上皮にCEA,CA19-9が陽性であった.術後経過は良好で,3カ月後の血清CA19-9値は18U/mlと正常値化した.膵囊胞性疾患の鑑別診断として,膵リンパ上皮囊胞の可能性も考慮する必要がある.