2015 年 40 巻 4 号 p. 687-692
胸骨の部分合併切除を要した原発性肺扁平上皮癌の2手術例を提示する.【症例1】44歳男性.右前胸壁の有痛性腫瘤を契機に肺癌と診断された.術前化学放射線療法を施行し,右肺上葉切除および胸鎖関節を含む胸骨の頭側右側の1/4を合併切除し,ePTFEシートにて再建を行った.【症例2】間質性腎炎にて通院中の71歳女性.左前胸部痛を主訴に肺癌と診断された.左肺上葉切除と胸骨の頭側左側1/4の合併切除および無名静脈合併切除再建を行いePTFEシートにて再建を行った.【考察】1例を原病死にて失ったものの,両症例ともに運動障害や呼吸障害は認めることなく経過した.胸骨の部分合併切除を要する肺癌手術症例は少ないが,症例や術式を選択して施行することにより,術後ADLの温存と予後の改善に寄与する可能性があると考えられた.