日本外科系連合学会誌
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症例報告
CEA,CA15-3が囊胞内液,血清ともに高値を示した,高齢者のHER2陽性巨大囊胞内乳癌の1例
及川 明奈 佐藤 隆宣福富 隆志廣瀬 茂道向井 清
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2016 年 41 巻 2 号 p. 161-166

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抄録

症例は89歳女性.増大する左乳腺腫瘤を主訴に来院し,視触診にて左乳房全体を占める可動性良好の弾性軟腫瘤を認めた.乳房超音波検査にて巨大囊胞性病変と内部に不整形乳頭状の隆起性病変を認めた.穿刺吸引細胞診で乳管癌と診断した.囊胞内液のCEA,CA15-3はともに異常高値であり,血清CEA,CA15-3も上昇していた.遠隔転移,他病変は認めず,左乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.病理組織学的診断は浸潤性乳管癌,乳頭腺管癌,リンパ節転移なし,ER+,PR-,HER2 3+であった.囊胞内乳癌は稀な疾患で診断に難渋することも多いが,高ホルモン感受性が多く比較的予後は良いとされている.本例は術前の血清,囊胞内液のCEA,CA15-3がともに高値であり診断に非常に有用であった.また本例は浸潤を伴うER,HER2陽性囊胞内乳癌と診断したが,その診断定義について文献的考察を加えて報告する.

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© 2016 日本外科系連合学会
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