2017 年 41 巻 6 号 p. 955-959
症例は83歳の女性,腹痛と嘔吐を主訴に来院した.腹部は膨隆し軽度の圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.CTでは肝S4に門脈ガス像,小腸の拡張と腸液の貯留を認めたが,腸管気腫像や造影不領域は認めなかった.単純性イレウスに伴う門脈ガス血症(hepatic portal venous gas:以下,HPVG)と診断し,保存的に加療をした.翌日のCTでは門脈ガス像は消失していた.イレウス管を挿入したが,イレウスが改善しなかったため,第22病日に手術を施行した.小腸に2×2cm大の管外発育型のGISTを認め,横行結腸と癒着しており,これが腸閉塞の機転と考えられた.腫瘍を含めた小腸部分切除を施行し,術後13日目に退院となった.HPVGは腸管壊死所見として手術適応と考えられてきたが,近年では軽症例や保存的加療を行った症例報告もみられるようになった.初期治療として保存的治療を選択しても,病態が経時的に変化する可能性を念頭に置いて治療に当たることが重要である.