2017 年 41 巻 6 号 p. 960-965
的確な術前診断とイレウス管挿入による減圧を行った後,緊急腹腔鏡下手術により整復治療が行えた回腸脂肪腫の1例を経験した.症例は70代女性.急激な腹痛と嘔気のため外来を受診した.右下腹部に有痛性の腫瘤を触知,腹部CT検査にて先進部は脂肪腫による回腸終末部腸重積症の診断となった.イレウス管挿入後,注腸にて整復を試みるも改善せず,発症より約12時間後に腹腔鏡下整復術,回腸部分切除術を行った.摘出された回腸には2cm大の粘膜下腫瘤がみられ,漿膜の色調変化を伴っていた.病理診断では回腸脂肪腫であった.脂肪腫による腸重積の頻度は少なくないが,的確な術前診断により緊急腹腔鏡下手術を行い,良好な経過が得られた症例の報告は少ない.文献的考察を加えて報告する.