日本外科系連合学会誌
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症例報告
傍ストーマヘルニアを有する人工肛門部に発症した特発性大腸穿孔の1例
岩田 至紀福田 賢也須原 貴志古田 智彦宮崎 龍彦
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2017 年 42 巻 5 号 p. 823-828

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抄録

症例は83歳,女性.36年前に直腸癌に対してHartmann手術施行.以後,外来で経過観察していた.牛乳を飲んだ後から急激な腹痛が出現し,当院外来を受診した.来院時バイタルは安定していたが,下腹部に軽度の膨隆を認め,同部位に圧痛があり,反跳痛と筋性防御を認めた.単純CTで胃背側から膵背側,左骨盤部に後腹膜気腫を認め,人工肛門部で腸管外への便の漏出を認めた.また,傍ストーマヘルニアを認めた.S状結腸後腹膜穿通と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内には混濁した腹水を中等量認めたが,便塊はS状結腸間膜内に留まっており,遊離腹腔内への漏出は認めなかった.結腸切除と人工肛門再造設術を施行した.術後経過は良好で特に合併症は認めなかった.病理組織学的検査では,憩室や腫瘍は認めず特発性大腸穿孔と診断した.傍ストーマヘルニアの併存により腹直筋貫通部での屈曲と腹腔内圧の急激な上昇が局所的腸管内圧の上昇をもたらしたと考えた.人工肛門部における特発性大腸穿孔は稀であり,文献的考察を加えて報告する.

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© 2017 日本外科系連合学会
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