2018 年 43 巻 1 号 p. 62-66
症例1は54歳,男性.貧血精査で腹部造影CTにてTreitz靭帯から空腸にかけて濃染する全周性の壁肥厚を認めた.上部消化管内視鏡検査で空腸に2型病変認め,原発性空腸癌と診断し手術を施行した.腫瘍はTreitz靭帯から約5cm肛門側にあり,リンパ節郭清を伴う小腸部分切除術を施行した.病理組織学的にSS,N1,ly1,v1,M0,fStage Ⅲaで補助化学療法施行した.症例2は89歳,男性.嘔気嘔吐を主訴に近医受診.上部消化管内視鏡検査で空腸に狭窄を認め,生検で中分化腺癌の診断,原発性空腸癌と診断し手術を施行した.腫瘍はTreitz靭帯から約5cm肛門側にあり,リンパ節郭清を伴う小腸部分切除術を施行した.病理組織学的にSS,N1,ly2,v1,M0,fStage Ⅲaであったが高齢で経過観察のみとした.原発性小腸癌は稀な疾患で,特異的な臨床症状に乏しいため早期診断は困難である.今回,術前診断可能で根治切除した空腸癌の2例を経験したので文献的考察を加え報告する.