日本外科系連合学会誌
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症例報告
1年前に嚥下した匙と歯ブラシによる腸閉塞に対してMDCTによる3D再構築像が診断に有効であった1例
清水 康博杉田 光隆中嶌 雅之小野 秀高馬場 裕之
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キーワード: 消化管異物, 精神疾患, MDCT
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2018 年 43 巻 2 号 p. 180-183

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抄録

症例は25歳,男性.精神疾患の既往があった.右下腹部痛を主訴に当院に救急搬送された.来院時,右下腹部を中心に強い圧痛と腹膜刺激症状を認めた.腹部単純CTで回腸内に並走した2本の棒状の異物を認め,それらの異物を起点に口側腸管が拡張していた.3D再構築によりそれらの異物は匙と歯ブラシであると判明した.保存的加療は困難であり,穿孔のリスクが高いと判断し,同日緊急手術を行った.異物の先端は回盲部に陥入し閊えている状態であった.小腸を切開し異物除去し,切開部は単純縫合閉鎖した.術後経過は良好で第5病日に退院となった.問診より,それらの異物は1年前に嚥下したものであった.回腸異物は腸閉塞や消化管穿孔の原因となりうる病態であり異物の形状や状態を把握することが重要であり,診断にはMDCTによる3D再構築像が非常に有用であった.また,精神疾患患者の腹痛の診察には異物嚥下も念頭に置き,十分な病歴聴取・問診が重要と考えられた.

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© 2018 日本外科系連合学会
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