2018 年 43 巻 2 号 p. 235-238
症例は70代女性.下血を主訴に当院内科受診.下部消化管内視鏡検査にて下部直腸(Rb)に30mm大の0-Ⅰ型腫瘍を認めた.生検を施行しgroup4と診断されたため切除の方針とした.腫瘍は肛門管上縁を越えて肛門側へ進展しており,ESDでは肛門管領域の静脈叢からの出血の対処が難しいことがあり,またTARでは腫瘍口側の視認性が悪いことがあり,それぞれの利点を生かし難点を補う目的でESDとTARを合同で行うこととした.手術はESDによる肛門管上縁までの切離を先行し,その後TARにより肛門管部分を切離し腫瘍を一括摘出した.病理組織検査でadenocarcinomaが検出されたが,水平断端,垂直断端ともに陰性であった.
本症例のような肛門管上縁を越えるような直腸腫瘤に対しては内視鏡的処置と経肛門的処置を組み合わせることにより安全にかつ確実に切除可能となり得る.