2018 年 43 巻 4 号 p. 566-571
目的:本邦において,2016年4月より腹腔鏡下系統的肝切除術が新たに保険収載された.系統的肝切除の中でも難易度が高いとされる腹腔鏡下肝前区域切除術において,われわれが定型化して行っている腹腔鏡独自の視野を活かした手術手技の安全性・有用性を検証する.
方法:2016年4月から2017年5月までに完全腹腔鏡下肝前区域切除術を6例に施行した.2014年4月から2017年5月までに施行した開腹肝前区域切除術10例と比較検討した.
結果:腹腔鏡手術から開腹手術への移行例はなく,両群間で患者背景に有意差は認めなかった.出血量は腹腔鏡群で有意に少なかった(70.5ml vs 753ml,p=0.011).手術時間などその他短期成績に有意差はなく,腹腔鏡群で大きな合併症や周術期死亡は認めなかった.
結語:われわれが行っている腹腔鏡下肝前区域切除は短期成績においては安全かつ有用と考えられた.