日本外科系連合学会誌
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症例報告
全結腸型の壊死型虚血性腸炎に対して大腸亜全摘術を施行し救命しえた1例
中本 裕紀石川 隆壽横山 良司西川 眞武冨 紹信
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2018 年 43 巻 4 号 p. 649-653

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抄録

症例は70代男性.高血圧があり内服コントロール中であった.急性硬膜外血腫で近医脳神経外科入院中に腹痛を発症し当科紹介.虚血性腸炎と診断,臨床所見が軽度であったことより保存的加療が可能と判断した.しかし入院後腹部所見が急速に悪化し,代謝性アシドーシスの進行なども認め腸管壊死を疑い試験開腹術を施行した.審査腹腔鏡にて横行結腸・S状結腸に壊死所見を認め,赤色に混濁した腹水を認めた.開腹手術へ移行後に上行結腸にも壊死所見認め,大腸亜全摘術,小腸単孔式人工肛門造設術を行った.術後経過は良好であり術後29日目に転院となった.病理検査で全結腸型の虚血性腸炎に矛盾しない所見を認めた.

全結腸型の壊死型虚血性腸炎は予後が悪く死亡率も高く,早期に診断するのは難しいことが多い.初診時に壊死所見を認めなくとも腸管虚血を疑った場合は適宜診察し,腸管壊死を示唆する所見をわずかでも認めた場合は速やかな手術を行うことが肝要である.腸管虚血は粘膜面でより進行しえるため腸管切除範囲の決定の際には漿膜面のみならず粘膜面の色調を確認する必要がある.

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