日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
臨床経験
当院における腹腔鏡下子宮全摘術の合併症に対する原因究明とその対策についての検討~複数科により作成した術中マニュアルの有効性について~
荻島 大貴濱村 憲佑
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 44 巻 4 号 p. 663-669

詳細
抄録

目的:腹腔鏡下子宮全摘術(Total Laparoscopic Hysterectomy:TLH)は,エネルギーデバイスの発達とともに普及してきた一方で,合併症も多く報告されている.当院でも本合併症が発生したため,原因分析と安全対策を行い,その有用性を検討した.

方法:複数科での合同チームを作り,合併症の分析を行い,それをもとに手術手技の改訂を入れたTLHの定型化マニュアルと,手術開始前と終了時の安全確認のチェックリストを作成し,改訂前後での手術時間,出血量,合併症の有無について検討した.

結果:改訂前のTLH件数は48件で手術時間の平均は133.1分,出血量は91.7ml,合併症は6例に対し,改訂後(39例)は手術時間162.0分,出血量53.6ml,合併症0例であり,手術時間の有意な延長をみるものの,出血量,合併症は有意に低下した.TLH+PL(Pelvic lymphadenectomy)でも,手術時間は延長(改訂前196.4分,改訂後271.2分)したが,出血量(改訂前222.9ml,改訂後53.1ml)および,合併症(改訂前1例,改訂後0例)には有意差はみられなかった.

結語:複数科による安全対策マニュアルを作成し,運用することによって周術期合併症を減らすことができた.

著者関連情報
© 2019 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top