2019 年 44 巻 4 号 p. 850-856
腸閉塞の成因のうち,内ヘルニアによるものは1%前後といわれており,その中でも子宮広間膜裂孔ヘルニア嵌頓は比較的稀な疾患である.本疾患は長らく術前診断が困難とされてきた.しかし,本疾患に対しての認識が広まると共に,画像検査技術の発達に伴い術前診断が可能であった症例が多数報告されている.今回われわれは,術前にCTで診断し,手術を施行した子宮広間膜裂孔ヘルニア嵌頓の2例を経験した.2例とも腹腔鏡下手術を施行し,術後経過良好であった.本邦報告115例に自験例を加えた117例について検討したところ,本疾患は腹部手術歴のない中高年女性に多いという結果であった.また,術前診断可能群の手術成績の方が不能群のそれと比較して有意に良好な結果であった.このことから,腹部手術歴のない中高年女性の腸閉塞の原因として本疾患を鑑別に挙げ,確実に術前診断することが重要と思われる.