日本外科系連合学会誌
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症例報告
粘膜筋板を超えてわずかに浸潤した部位が仮性憩室だったためT3進行癌と診断したS状結腸癌の1例
谷口 竜太皆川 紀剛鬼塚 幸治坂本 吉隆
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キーワード: 大腸憩室, 大腸癌
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2020 年 45 巻 1 号 p. 62-67

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抄録

症例は83歳,男性.下血で下部消化管内視鏡検査を施行.S状結腸腫瘍と多数の憩室を認め,憩室内に腫瘍進展が疑われた.生検結果でGroup 3,絨毛腺腫だった.造影CTでS状結腸の腫瘍性病変以外,特記所見は認めなかった.注腸造影でS状結腸腫瘍の周囲に多数の憩室を認めたが,壁の不整は認めなかった.S状結腸腺腫の憩室内浸潤のため,内視鏡的粘膜下層剝離術では穿孔の危険性も高く,また癌の成分を一部含むことも予想され,腹腔鏡下S状結腸切除術の方針とした.肉眼所見では腫瘍の憩室内浸潤所見は同定できなかった.病理検査で,病変は通常の大腸壁粘膜に癌を認めたが,さらに仮性憩室内に連続する癌が漿膜へ浸潤しており,進行癌の診断だった.仮性憩室内癌は筋層が欠如しているため,進行癌や穿孔で発見されることが多く,憩室近傍の高度異型や粘膜癌を疑う場合は,内視鏡的切除よりも手術が推奨される.

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© 2020 日本外科系連合学会
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