2020 年 45 巻 2 号 p. 127-133
症例は65歳男性,2014年3月に肛門痛と排便時に出血を認め近医より紹介になった.肛門部に有痛性の硬結を触れた.下部消化管内視鏡検査で,肛門縁より歯状線を越えて,左半周領域に隆起性病変を認めた.左鼠径部には,約2.5cmの硬結を触れ,この部位の生検で神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma,以下:NEC)と診断した.鼠径リンパ節転移を伴う肛門管NECに対し,術前chemoradiation therapy(以下:CRT)後の腹会陰式直腸切除術を計画していたが,CRT後のPET検査で傍大動脈リンパ節の転移を認めた.肛門管,鼠径部に追加照射を施行後に,肺小細胞癌に準じた化学療法を施行した.傍大動脈リンパ節,鼠径リンパ節の転移はともに消失し,治療後5年も無増悪生存中である.肛門管NECの予後は極めて不良である.本邦の報告例では,腹会陰式直腸切除術または局所切除術が施行されている症例がほとんどであるが,自験例ではCRT後の追加照射および化学療法が著効し,良好な経過を得た症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.