2022 年 47 巻 2 号 p. 152-159
腹壁浸潤を伴う進行大腸癌は腹壁合併切除により良好な予後が期待できるが,広範囲な腹壁欠損がある場合は腹壁再建を要する.症例は74歳,男性.30年前に直腸癌に対し,腹会陰式直腸切断術を施行された.今回,人工肛門直下に腹壁浸潤を伴う大腸癌を認め,形成外科と合同で腹壁合併切除を伴う結腸部分切除術と腹壁再建を施行し,人工肛門を再造設した.大腿筋膜張筋(Tensor Fasciae Latae:TFL)皮弁と前外側大腿(Anterolateral Thigh:ALT)皮弁との連合皮弁を用いて腹壁再建を行った.病理組織学的所見はpT4b(腹壁)N0M0,pStage Ⅱcであり,断端も陰性であったため,根治切除となった.術後の皮弁血流は良好で創感染なく生着し,経過良好にて退院された.術後13カ月現在で無再発経過中である.広範囲の腹壁合併切除に対して,TFL・ALT連合皮弁を用いて腹壁再建を施行した1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.