2024 年 49 巻 6 号 p. 500-505
症例は55歳女性.肛門から脱出する腫瘤,疼痛を主訴に当科を受診した.用手的還納は不可能であり,CT検査で脂肪成分を含む腫瘤による直腸腸重積の診断となり,緊急手術を施行した.直腸の重積はHutchinson手技では解除されず,腸重積のまま検体を切除すべく直腸を剝離中,先に切離した口側腸管の断端がさらに直腸内に引き込まれ,肛門から体外へ完全に翻転,脱出し腸重積が解除された.会陰部で腸管を切除した後,脱出腸管を腹腔内に戻し腸管吻合を行った.切除検体は肉眼的に表面平滑で,境界明瞭な75×55mm大の腫瘍であり断面は黄色調であった.病理組織学的には粘膜下層から漿膜下層に成熟脂肪細胞の増性を伴う腫瘤を認め,悪性所見は認めなかった.医学中央雑誌で検索した結果,肛門部に腫瘤脱を認めたS状結腸脂肪腫の報告は,本邦では自験例を含め12例の報告を認めるのみであり,文献的考察をふまえ報告する.