1994 年 19 巻 4 号 p. 105-109
上部消化管術後の栄養管理における経腸栄養の意義について, 栄養法の差異が腸管粘膜構造, 機能に及ぼす影響の検討を行った 小腸構造では, 完全静脈栄養群において高度な絨毛の痩せと絨毛間隙の開大化が著明であったが, 経腸栄養群での変化は軽微であった。合併症として, 経腸栄養では腹部膨満感や下痢, 完全静脈栄養ではカンジダ感染症の発生がみられたが, 栄養指標は両栄養法ともほぼ等しく推移した。単独施行に比較し, 完全静脈栄養で開始し低残渣食による800kcal/日程度の経腸栄養を行う併用療法では経腸栄養に伴う下痢症状の発現はみられず, 腸管粘膜の成熟度を反映するdiamine oxidase活性も経腸栄養群と有意差を認めない程度に保持された。術後にみられる経腸的phenolsulfonphtalein投与後の尿中排泄率の増加は経腸栄養の開始により減少傾向がみられた。以上の結果から, 併用栄養は副作用の軽減や腸管機能の維持面で有用であることが示唆された。