日本外科系連合学会誌
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消化器外科領域における自己血輸血の研究
寺田 信國佐野 晴夫小玉 正智
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1995 年 20 巻 4 号 p. 245-249

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抄録

【目的】本研究は, 自己血輸血を施行するに際して, 消化器外科の領域における特徴的な問題点を明確にすることを目的とし, さらにわれわれの解決策について検討した。【方法と結果】1) 教室の胃癌治愈切除症例で輸血群 (145例) と非輸血群 (102例) とで比較した。輸血群で予後の増悪が見られ (p<0.01), 特にこの予後増悪はstageII+III+IV症例でみられ, この症例の多変量解析では, 輸血は予後に影響を与える因子の一つであった。2) 動物実験では, 同種血輸血は, 腫瘍増殖を促進したが, 同系輸血では影響はなかった。3) 胃癌の進行程度が進むにつれて, 貧血症例が多くなり, 貯血の適応からはずれる症例が多くなった。4) エリスロポエチン (EPO) は in vivo, in vitro の実験で腫瘍増殖に影響は与えなかった。5) 自己血輸血症例でEPO投与群 (21例), 非投与群 (46例) の比較検討では, 軽度貧血のある症例でもEPO投与で自己血輸血の対象とすることが可能となった。

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