抄録
2断層像を同時に表示することの可能なバイプレーン経食道超音波法および経皮経肝門脈造影法による門脈圧亢進症における上行性側副血行路の描出能力を比較検討した。対象は, 1990年9月から1995年2月までの期間にバイプレーン経食道超音波法および経皮経肝門造影法の両方で上行性側副血行路を評価できた門脈圧亢進症症例12例である。バイプレーン経食道超音波法に使用した超音波検査装置はアロカ社製SSD870システムで, 本装置には血流速度の半定量的分析および血流の波形分析が可能である高速フーリエ変換機能が内蔵されている。食道静脈瘤の描出はバイプレーン経食道超音波法では12例中12例 (100%), 経皮経肝門脈造影法では12例中10例 (83.3%) であった。食道静脈瘤の供血路の存在が確認されたのはバイプレーン経食道超音波法では12例中8例 (66.7%), 経皮経肝門脈造影法では12例中10例 (83.3%) であり, 両者に統計的な有意差は認められなかった。食道静脈瘤の流血路の存在が確認されたのはバイプレーン経食道超音波法では12例中11例 (91.7%), 経皮経肝門脈造影法では12例中10例 (83.3%) で両者に統計的な有意差は認められなかった。以上よりバイプレーン経食道超音波法は, 侵襲的な経皮経肝門脈造影法と比較して, 食道静脈瘤, 食道静脈瘤の供血路および食道静脈瘤の流血路の描出能力において, 一部に制限があるもののほぼ同等の描出能力があることが示唆された。