日本外科系連合学会誌
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悪性の疑いにて切除された非悪性肝腫瘍症例の検討
藤崎 滋三宅 洋中山 寿之大井田 尚継根津 健天野 定雄黒須 康彦
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1997 年 22 巻 2 号 p. 198-201

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抄録

過去10年間の当科において悪性肝腫瘍の疑いで切除された非悪性肝腫瘍11症例について臨床的検討を行った。術前診断は, 肝細胞癌8例, 転移性肝腫瘍2例, 肝嚢胞腺癌1例であった。肝細胞癌の診断の8例中, 肝炎ウイルスマーカー陽性は4例, AFP高値, CA 19-9高値は各1例, 背景肝は肝硬変4例, 慢性肝炎2例であった。転移性肝腫瘍の診断の2例は, S状結腸あるいは盲腸が原発巣と考えられた。肝嚢胞腺癌の診断の1例は画像上一部に乳頭状発育を伴う嚢胞性腫瘍であった。肝部分切除が9例 (81.8%) に, 区域切除以上の肝切除が2例 (18.2%) に行われ, 術後合併症はなく, 術後平均在院期間は26.2日であった。最終診断は肝血管腫5例, 再生結節2例, 腺腫様過形成1例, 限局脂肪化1例, 炎症性腫瘍類似病変1例, 肝嚢胞1例であった。画像診断の発達した今日でも肝腫瘍の質的診断に苦慮することがあり, 肝癌を否定し得ない場合は肝切除が必要と考えられた。

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